【完】俺の隣にいてほしい。
そんなふうに言われて、返す言葉に詰まる。


もちろん、隆太は俺が心音とマジで付き合ってるって信じ込んでるから、心配してくれてるんだろう。


でも実際のところ俺は心音の本物の彼氏じゃないから、彼女のことを束縛する資格なんてねぇし。


「……いや、よくはねぇけど、だからって心音に他の男と関わるなとか言えねぇだろ。ただの友達かもしんないし」


なんて、ほんとはすげぇ嫌だけど、物分かりのいいふりをしてみせる。今さら隆太に実は付き合ってないなんて言うわけにもいかないし。


そしたら隆太は渋い顔をしながら心配そうに言う。


「そっか、まぁそうだよなぁ。でもその男、もしかしたら心音ちゃん狙ってるかもしんないし、気を付けたほうがいいぜ」


「あぁ、わかったよ」


何をどうすることもできない俺はただ頷くことしかできなかったけれど、一気にテンションが下がったことは確かだった。


知りたくないことを知ってしまったような、そんな感じだ。


今まで心音が俺といない時に他の男といるかもしれないなんて、そんなことあまり考えたことなかったけど、いざこんな話を聞いてしまうと、不安になる。


俺はまだ、心音のすべてを知らない。むしろ、知らないことのほうがたくさんあるわけで。


彼女に近づけたような気がしていたけれど、それは俺の勘違いで、うぬぼれだったんじゃないかって。


そう思ったら急に、切ない気持ちになった。



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＊


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