【完】俺の隣にいてほしい。
「へぇ。心音ってこんな字書くんだ。すげぇ勉強してんだな」


「そ、そんなことないよっ。それに、これは塾でこの前、氷上くんがまとめてくれたやつで、私が書いたものじゃないから……」


私が正直に告げると、椿くんがハッとしたような顔でこちらを振り向く。


「えっ……。氷上って、この前コンビニで会った星川の男友達?」


「あ、うん」


「ふーん。そいつに勉強教えてもらってんだ」


でもなんだろう、その表情はさっきまでとは違い、少し曇っているように見える。


あまり氷上くんと仲がいいと思われても困るから、変な誤解をされないよう説明しておいたほうがいいかなぁ。


「う、うん。実は私、最近すごく成績が下がっちゃって、お母さんに怒られちゃって。それで氷上くんに分からないところを少し教えてもらったりしてたの」


「……」


「私、数学がすごく苦手で。反対に氷上くんは数学が得意だから……」


なんて、苦笑いを浮かべながら話す私。


するとそこで、椿くんが手に持っていたルーズリーフからパッと手を離したかと思うと、急に私の体を自分のほうへと抱き寄せた。


「ひゃっ」



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