【完】俺の隣にいてほしい。
……椿くんっていうんだ。


確かにさっき女の子たちからそう呼ばれてたな。しかも、同級生だったなんて。


「だから、敬語いらねぇ。タメでよろしく」


「あっ……はい」


と、言われてすぐに敬語で返事をしてしまった私。


「だから、タメでいいってば」


「うぅっ、ごめんなさい……」


ダメだ。初対面の人に、いきなりタメ口で話すなんて難しいよ。しかも、男の子に向かって。


すると、そんな私を見て椿くんがクスッと笑う。


「そんな緊張すんなよ。俺べつに、取って食ったりとかしねぇから」


その顔は、意外にもすごく優しそう。


「いえ、そんなことは……っ」


「俺のことは椿でいいよ。よろしくな、心音」


いきなり呼び捨てで呼ばれて、ドキッと心臓が跳ねる。


男の子に名前を呼び捨てされるなんて、たぶん、小学校以来じゃないかな。


「う、うん……。よろしくね」


私は、今度こそ敬語にならないようと、気を付けて頷いてみせた。


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