【完】俺の隣にいてほしい。
観覧車を降りたあとは、さらに日が暮れて、あたりが少し薄暗くなり始めていた。


私は先ほどの出来事のせいでまだ少しドキドキしたままだったけれど、それを悟られないようなんでもない顔で椿くんに話しかける。


「楽しかったね」


「あぁ。だいぶ満喫した」


「私も。今日は本当にありがとう」


そう言って彼を見上げると、椿くんがこちらを振り向いて笑みを浮かべる。


「こちらこそ、ありがとな。それじゃ、そろそろ帰るか」


「うん」


そのまま自然に手を繋がれて、入り口ゲートに向かって歩いていく。


なんだかとても名残惜しい。とうとう終わっちゃったなぁ。


そして、二人で門をくぐり抜け少し歩いたところで、椿くんが急に立ち止まった。


「心音、あのさ……」


「ん? どうしたの?」


私が顔を覗き込むと、椿くんは真面目な顔で私をじっと見下ろす。


「実は、今日は心音に話したいことがあってここに来たんだよ」


「えっ」


話したいこと?



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