【完】俺の隣にいてほしい。
「それからまた会えねぇかなって思ってて。そしたらある日朝たまたま電車で見かけてさ。でも、ナンパみたいに思われんのも嫌で、なかなか話しかけらんなくて。そしたらあの時偶然駅で心音がぶつかってきて、スマホ壊されて。チャンスだと思ったんだよ」


ウソ。じゃあ、それであの時……。


「俺のこと好きになってもらうチャンスだって」


「そうだったんだ。なんか、すごい偶然……」


「だよな。俺もそう思った」


それじゃあ、椿くんが私に彼女のフリをしてほしいって言ったのも、女よけのためとかじゃなくて、私と仲良くなりたかったからってこと?


椿くんは最初からずっと、私のことを想ってくれていたんだ。


今まで彼がくれた言葉も、優しさも全部、本物だったんだ。


ウソなんかじゃなかったんだ。


そう思ったら急に胸がいっぱいになって、また涙が出そうになった。


なんだ。そうだったんだ……。


本当に夢みたい。こんなことってあるんだね


じゃあ、すべては最初からつながっていたんだ。


でも、それならどうしてあの時、椿くんは急にお別れみたいなことを言ったんだろう?



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