桜咲く季節がめぐる瞬間(とき)
「咲月」
「…お父さん」
「どうした? 忘れ物でもしたのか?」

これ以上お父さんを苦しめたくない。

「なんでも、ないよ」

言葉とは裏腹に、再び涙が溢れ出す。
お父さんは私をやさしく抱きしめた。

「今日はゆっくり休みなさい」
「ごめんね、お父さん」

お父さんは何も聞かずに部屋のドアを静かに閉めた。


部屋にこもって1人で泣いた。
涙がかれるまで、泣き続けた。


毎日めぐるくんと電話をする約束をしている。
今日も変わらず、いつもの調子で楽しそうに……話せていたかな?
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