道案内のその後は


「どうして、謝るんですか?僕はすごく楽しかったですけど……迷惑でしたか?」


「迷惑なんて!そんなことは…」


言葉にしてから自分がとても失礼な発言をした事に気付いた。

一日案内してくれた人に、まず言うべきは感謝の言葉のはずで、「ごめんなさい」では無いだろう。


それでも、気になってしまう。
彼の抱えている物が。気付かない振りならいくらでもできる。

でも、私にはそれがなぜか、彼に不誠実であると思えてならなかった。


「何か、しましたか。僕」


「いえ、柊さんは何も!ただ、気を悪くしたならごめんなさい。柊さんがたまに申し訳なさそうに話すことが気になってしまって……」


柊さんの顔は見えない。

けど、一瞬ピリッと緊張感が走ったことがわかった。


やっぱり、触れちゃいけない話題だったんだ……どうしよう……


「すみません……それは、今は言えなくて……」

「そうですよね!変なこと聞いちゃってごめんなさい!いい感じに回復したのでホテルに帰りましょうか?」


やっぱり、聞いちゃいけないことだったんだ。

柊さんからあからさまに聞いてくれるな。という雰囲気が感じ取れる。

でも、「今は」とはどういうことだろう。


もう話す機会なんて…無いよね。



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