道案内のその後は
「ホテルに着いた…柊さんすごい…」
「何もすごくないですよ、普通に帰ってきただけですから」
手で口元を覆っている柊さんに気付いてはいるが、 方向音痴の私からしたら1度も迷わず目的地に着くことが普通であるわけが無い。
地図アプリでさえ私を裏切る。
「では、本日はありがとうございました。とっても楽しい1日になりました」
「僕も、こんなに楽しい休日は久しぶりです。仕事もちょっと楽しみになりました」
そんな風言ってもらえると申し訳なかった気持ちが少し、和らぐ。
もう会えないのはなんだか寂しい。しかし、ここまでしてもらって連絡先を私から聞くのもなんだか図々しく思える……
いや、この出会いは良い思い出として楽しい記憶にしておく方が良いと思った。
旅行でのひとつの思い出。
私は素敵なあたたかな「思い出」にしたかったのだろう。
それからお互いに「連絡先の交換」については触れず、ホテル前でお別れした。
楽しい…1日を終えた。