Love EaterⅡ
匂いに、声音に反応して顔を上げた瞬間には腕に絡み付いて来る気配があって。
それに驚嘆の声を上げるより早くぐにゃりと視界が歪んで遠心力まで体に感じたのだ。
全て六花の、魔女の為せる業だと念頭にあるから然程驚くことは無いにしろだ。
それでも最初の『なんでここに?』という疑問と驚愕は継続で、ようやく視界も足元も安定したこのタイミングに口を開いたのだが。
「………何だよ、その格好」
「何だ?って…見たまんまのきゃわゆいクラシカルナース六花ちゃんでしょ」
「……ナースって言ったら白衣の天使じゃねえのかよ?」
「黒衣の天使でも可愛さに変動は無いからいいんです」
何親指突き立ててどや顔してやがるんだこの女は。
と、皮肉な突っ込みを入れたのは心の内側でのみ。
音として響かせられなかったのは事実愛らしいと悶えたソルトだからである。
思わず予定していた最初の第一声の言葉が挿し変わった程に。
今も目の前で『可愛いでしょ?』と自画自賛しながらくるりと回って見せる六花は未だ年齢操作をした姿ではあるが昼間の格好からガラリと変わったナース服。
レトロと言えるようなそれは黒のロングドレスにフリルのついたこれまた黒いエプロン仕様。
さしずめ、黒衣の小悪魔と言ったところか。