Love EaterⅡ
こうして見つめている間もソルトの視線は一向に六花のそれと対峙しない。
見るからに体調不良なのだ、視線が落ちていても不思議ではないのだが。
そんな理由の他に敢えて視線を逸らされているような気がするのだ。
「……っ……悪い。本当……頼むから今日は帰ってくれ」
困惑のまま無言で立ち尽くしていれば再三そんな拒絶の一言がソルトの口から追加され。
挙句はふらりと動き出したソルトは六花から逃れるように部屋の奥へと歩み始めるのだ。
実際、逃れようと必死。
気を抜いてしまえば今にも我を忘れて六花に食らいつてしまいそうなのだ。
血が…心臓が騒ぎ立ててて煩い。
一秒毎に理性が一つ一つぶっ壊れていってる気がする。
頼むから……早く帰ってくれ。
何の説明もなく言い方すら邪険なのは分かってるし酷いと分かってる。
それでも、このままじゃもっと酷い事をお前にしてしまいそうで……。
ああ……マズい。
もう本当に限界だと感じた瞬間、咄嗟にソルトの手はポケットの中の薬を探り掴んで口に運んでいて。
放り込む直前、チラリと捉えたカプセルは見慣れぬ色味であって。
あれ?なんて疑問を抱いたのはすでにそれを飲みこんでしまった頃合い。
思わず喉元を押さえながら思い出した薬の詳細は。
時雨がくれた薬だ。と、いう事。