Love EaterⅡ
今この状況では微々たる効能でも飲まないよりはいい。
そんな判断から抑制薬を服用することを選んだのだ。
それなのに、どうやら掴み取ったそれはいつもの百夜からの常備薬ではなく時雨から貰った一錠。
間違った。と飲みこんだ瞬間こそ焦りはしたが、それでも時雨はこう言っていたのだ。
『抑制も限界だと感じるような時にでも服用してみてください』
だとしたら、まさに今がその服用時である筈だ。
その効果が百夜のそれほどでなくとも時雨もまた言わずと知れた魔導士である事は事実。
とにかく今は効果が出ればどっちでもいいと激しい渇望を堪えるように踏みとどまって目蓋を下ろした刹那。
「……会いたかったんだ」
「っ……」
「本当は……ただ……ソルトに……会いたかった」
トンと、背後から受けた衝撃と温もりにはパッと目を見開き息を止めてしまった。
胴回りに得るキュッと縋るような腕の力といつになく弱々しく甘えるような声音には内側から溶解するような感覚を覚え始める始末。
熱い………。
熱い熱い熱い…。
「本当は……恐かったんだ、僕」
止めろ……離れろ六花…。
「ソルトと離れたあの後……安心したら逆に恐くなった」
心臓が痛い……。
「ソルトが死んじゃってたらって思ったら恐くなって……会いたくなった」
血が沸騰しそうで……。
「疲れてるのも体調が悪いのも知ってるよ。」
気が遠くなりそうなんだ。
薬を飲んだ筈なのに……なんだか逆に身体が熱くて血が滾る。
「でも……お願いだから、」
ああ、もう……、甘ったるい…。
酔って酔って……、
「っ……僕を拒絶しないで…」
………欲しい。
『離れろ六花っ__』
………そう、牽制を叫んで突き放したつもりだったのに。
「っ___ん…はぁっ……ソル…ト?」
何で俺は……六花に噛みつく様に口づけてるんだ?