Love EaterⅡ
ソルトのギリギリの理性が起こした行動目的は六花を突き放す事であった。
背後から抱きついている六花を引きはがして、再度『帰れ』と拒絶するつもりであったのだ。
それなのに振り返りその姿をまともに映し込んだ瞬間。
今にも涙を零さんばかりの微睡んだ六花の表情を捉えた瞬間、最後の理性が飛んで本能のままに食らいついてしまったのだ。
食らいついてしまえばもう抑制の立て直しなど不可能。
寧ろ無理な抑制の反動とばかり、
「んっ…はっ……んんっ___」
六花に言葉を挟ませる隙どころか、まともな呼吸すら許さず深く口づけて。
当然まともに立っていられなくなった六花を床に組み敷いたのも一瞬の事。
六花の驚愕や戸惑いなどまるで気に掛ける意識もなく。
次の瞬間には六花の服の胸元は乱暴に引き裂かれて弾けたボタンが転がっていく。
そうして露わになった肌に触れてくる感触も力も優しさや甘さなんて余裕は皆無。
寧ろ、逃さぬと自分の獲物を抑え込むような力と乱暴さは強姦さながら。
いや、強姦というよりまさに獣の捕食。
愛情というより本能が為すそれは抑え込まれる側からすれば恐怖以外の何者でもないだろう。
普通であるなら。
殺さんばかりのソルトの口づけからようやく解放された六花の唇からも悲鳴か嗚咽が漏れるものだと。
それなのに漏れるのは乱れた呼吸ばかりで音はない。
双眸から流れる涙も生理的なものばかりで畏怖なんて皆無。
震える両手は拒絶を示してソルトの胸を押し返すどころか…。
「はっ………足りない…」
スルリとソルトの頭を抱き寄せ甘く誘うような声を囁き始める。
「もっと……もっと…頂戴よ?」
「………っ…」
そんな、『まるで足らない』とばかりの不満を囁くや否や、今度は六花がソルトの唇に食らいつき返したのだ。
ソルトと同等の渇望を紫の双眸に揺らして。