Love EaterⅡ
『まあ、でも…話からするにいつもの惚気の類とは違うらしいし興味もある。それに、リッくんを翻弄する噂の魔女子ちゃんには一度会ってみたかったからね。詳しい詳細説明の為にもこっちにおいで』
「『おいで』たって…、本部に魔女のままの六花を連れてくのはそれこそ厄介なんて話じゃねえぞ?拘束した被疑者でもないし、かといって説明するにも事情も複雑だ。特効薬が効かないなんて異例は本部でも大騒ぎになる」
『そんなの秘密裏に入り込んでしまえばいい』
「簡単に言うな。本部に魔女センサーな呪文張ってるのはそれこそお前達魔導師だろうが」
『その魔導師である僕がおいでって言ってるんだ』
「だからどこからっ…」
『そこから、』
「っ…!?」
百夜の返答が返されるや否や、カチャリと小さく音を立てたのはソルトの背後にあった部屋の扉だ。
薄っすらと隙間程度に開いた扉はまさに『おいで』と誘いをかけているのだ。
『さあ、おいでよ、』
そんな再三の誘いにはソルトも息を吐きつつ、六花を手招きして使い慣れた扉を押し開く。
本来であるならその扉の向こうは広々としたリビングが広がるのだが、
「『やぁ、いらっしゃい。そして、はじめまして、魔女子ちゃん』」
生の声音と機械越しの声の二重奏。
嗅覚を擽るのは絡みつく様な甘い香り。
開けた視界にはいつものリビングではなく、見覚えのある研究室とその部屋の主がいつも通りに紫煙を揺らして待ち構えていたのだ。