Love EaterⅡ
あまり期待しないでおこう。
なんてソルトが音のない息を吐いたタイミング。
「リッカ君は優しい人ですねえ」
「………えっ?」
「あなたに想われるというのは実に心地よく幸せでしょうね」
「えっと……時雨…さま?」
「でも……時間というのは実に悪戯で残酷で儚い物でもあるんですよ。とりわけ……恋の時間という物はね」
響く声音のトーンに特別な変化はない。
入り込むのはいつも通りの時雨の穏やかな口調である筈なのに、どうしてかいつもと違うと緊張の糸が張るのだ。
何が違和感であるのか。
それを確めるようにソルトの双眸はジッと探るように時雨の後ろ姿を捉え続け、そんな視線に気づいているのか時雨は小さく感情の読めない失笑を漏らすのだ。
そうしてようやくゆっくりと振り返った姿はどこか哀愁を覚える儚げな微笑みを浮かべてソルトを見据える。
そんな時雨の姿には金縛りの様に動きが止まり、言葉を発するのも忘れてしまう。
そんな沈黙に弾かれるのは、
「大切なのはいつだってその瞬間なんですよ」
「………」
「次なんてあてにしてはいけない。次の瞬間なんて物があるとは限らない」
「………」
「どんな事情のどんな悩みであっても相手を失ってしまった途端に後悔になる。なぜ悩むことに時間を費やしたのだと」
「………」
「……フッ…なんて、過去に悔いのある者としての心ばかりの忠告というところです。参考ばかりに。ああ、でも別にリッカ君の優しさを否定しているわけではありませんから悪しからず」
いつも通りののほほんとした笑顔だ。
戻った。
張りつめていた緊張の糸も緩んだと感じるのにどうしてか…言葉を発することに迷う。