Love EaterⅡ
とは言っても、満月本番の夜より日中はいくらかマシであるのだ。
それでもしんどいものはしんどい。
今も効きすぎる嗅覚にげんなりしながら口元を手で覆い、幾度目かの溜め息を漏らした刹那。
不意に聴覚が拾い上げた今まで以上の騒めきには『なんだ?』と反応して顔を上げてしまう。
まだ目に見える距離でのそれではなく、それでも徐々にこちらに近づいてきているのはよく分かる。
段々とその騒めきの細かな言葉も聞き取れてくれば、
『うわっ、超可愛くね』『肌しっろ!腰の細さとかヤバくね?』『お前声かけて来てみろよ』
なんて、主に若い男子の色めき立った盛り上がりの言葉ばかり。
そんな若者のはしゃぎようを聞き入れたソルトの反応と言えば、『若いねえ』と苦笑する程度で興味はなし。
元々女性に困った事も無ければ美人と言える女性とも関係は多々。
今更通りすがりの美人なんかに興味を持つわけもなく、ただ六花の姿を待ちながら自分の効きすぎる嗅覚に眉根を寄せていたのだが。
ん?
あれ?
なんか……騒めきがどんどんこっちに来てる気が…。
別に興味はなかった。
だけでも勝手に聴き取ってしまう騒めきがまっすぐに自分の方向に近づいてくることには興味はなくとも意識を走らせてしまうというもの。