Love EaterⅡ
五感が鋭すぎるが故の難儀はあれど、反して自分の利になる部分もある。
こんな天災の様な事態の直後だ。
道は荒れに荒れて、まともな道には混乱に満ちた人間が溢れかえっている。
交通網も当然にストップしている中、ソルトが目的地に向かうことなど本来であるなら難しい話。
まともな人間であるなら。
だけどもソルトの場合、狼の血が、本能が抜けられる道も危険も感じ取り導いてくれる。
人ではあり得ぬ脚力とスピードで目的地へと距離を詰める事が可能。
それでも、その間にも魔女の方もどんどんと被害を広めていっているようで、その都度ソルトの耳には至る方向から現状の悲惨さが伝わってくるのだ。
「チッ……やりたい放題やってくれるよ」
何が目的かは知らないが本当に都市一つ潰しかねない勢いだ。
早く何とかしねえと。
そんな事を思って見上げる視界には高層と言えるビルが無傷に一つ。
てっぺんまで上り詰めればきっと被害にあった全ての惨状が見渡せるだろう。
魔女の気配は…匂いは強く濃くてっぺんから漂ってくるのだ。
自分の周囲には物の見事に人の気配はない。
日の高い日中の街中である筈なのに。
この分だと他の神父も駆けつけるだろうがやっぱり一番近くにいるのは俺になるんだろうな。
つまりは…
「一番天国に近いってか……」
なんて……マジすぎて笑えねえや。
ここまでの力を悪意で誇示する魔女相手だ。
対峙して無傷で終われるなどソルトだって思ってはいない。