Love EaterⅡ
気が付けば緊迫感もそっちのけでいつものペース。
こんな事をやってる場合でも状況でもないというのに。
そんなまともな意識が回帰したとほぼ同時、再びどこかに被害が広がったのだろう。
足元から響く地響きと聴覚で嫌でも拾い上げる音声と。
流石に『死にたくない』なんて私情のグダつきなんて秒で放り捨て、翻したソルトの身はまっすぐに高層ビルの入り口へ駆け出したのだ。
それでも、その足が地面を踏み込んだのは僅か一歩。
二歩目の足が蹴り上がるより早く六花の手がソルトの背中を掴んで待ったをかけたのだ。
当然、振り返るソルトの表情に先程の様な砕けた感情はなく、寧ろ『何をするんだ』と瞳孔全開にいきり立ってまで見える。
そんなソルトの姿に六花も怯むでもなく、寧ろヤレヤレと言わんばかりの呆れた眼差しを向けて息を吐くのだ。
「仕事馬鹿なところもソルトの魅力の一つだけどさぁ。言ったばっかじゃん?何サラッと死に行こうとしてるの?」
「死なねえようにどうにかしろって話だろ!?すればいいんだろ!?分かったから離せっ!」
「はぁ、ねえ?馬鹿なの?まるで分かってないじゃん。相手は魔女だよ?本気になればソルトなんて虫ケラの如く秒殺よ?」
「ああっ!?じゃあどうしろってんだ!?行くなってか!?散々贅沢三昧の甘い汁啜っておいていざって時に敵前逃亡しろってか!?はっ、そんなの御免だね!俺はっ_」
「目には目をだよ、ソルト」
また……その目かよ。