Love EaterⅡ
ソルトは別に高所恐怖症なんてものではない。
高層ビルの縁に立つ事だって然程恐怖を感じた事はないが、流石にこうして心もとない箒の柄に跨っての上空飛行という物には体が強張ってしまう。
不思議と乗り心地は悪くはないし、ふらつくこともない安定感ではあるのだが。
「お前…よくこんな物で平然と空飛べるな」
「あはは~、ソルト声震えてる?」
「こんな細木一本で足も宙ぶらりんの上空散歩とか流石に恐いわっ!!」
「……一回転でもしてみせようか?してあげようか?」
「やめてくださいっ!そりゃもうガチにっ!…って、何楽しそうなワクワク顔でどS発揮してんだてめえはっ!!」
「んふふ~、だってソルトと箒でツーリングとか夢だったんだもーん」
「そんな呑気な状況じゃねえんだよ!!そもそも人の話も聞かねえで勝手な事しやがっ…」
「あ、ほらもうすぐビルのてっぺん間近~。ほら、地上がミニチュア模型の様だよソルト~」
「っ……わざと下見させてんじゃねえよぉぉぉ!!!」
ふっざけんな!!と怒鳴ってみせようがこの状況下ではソルトに勝ち目なんてある筈もない。
今から死と隣り合わせの魔女狩りに赴くというのに、どうにも緊張感の継続しない二人なのだ。
どこまでもバカップルの『魔女には魔女』作戦はどうなる事やら。