Summer -未成年-
僕はあまり自分から話し掛けるタイプでは無かっ“た”。
前言撤回して過去形にしなければならない。
気付けばさっきの荒木のマジックに興味津々々々と、しんしんが止まらなくなっていた。
「勘違いするなよ。
“外で昼寝したいから鍵貸してください”ってちゃんと先生に許可を取ろうとした。
でも断られたから仕方なくやってる。」
「さっきの針金みたいな物を使えば開けられるの?」
「練習すればどの鍵も大体開けられるようになる。」
「すごい・・・。」
「勘違いするなよ。空き巣をやろうなんて全く考えたことも無い。」
「じゃあどうしてその技を身につけようと思ったの?」
「親父もお袋もしょっちゅう鍵無くして、
家に入れないっていう事が小さい頃から続いて。
でも、自分達はすぐ無くすくせに、
ガキの俺に鍵を持たすのは危ないからって言って持たせてくれなかった、
って爺ちゃんに話したら教えてくれた。」
特技:ピッキング
と言う人間に初めて出会った。
就職活動の時には絶対に武器に出来ない特技がなんだか面白くて、
踊り場から教室まで、
荒木と喋りながら一瞬で着いてしまった。
「お前も食った後あそこで寝ると気持ちいいぞ。」
「じゃあ・・明日行ってみてもいい?」
僕の“ぼっち飯”は、
わずか数日で幕を閉じた。