虹色シンデレラ
その日一日、私たちは寝室で過ごした。

何をするわけでもなく、ウダウダと時間を費やした。


「来週から大学に行ってもいいぞ」

ええ?

「だってお母様が」

「いいんだ。俺が話しておくから」

心配するなと言ってくれる。


「ありがとう」

うれしい。

また大学に行ける。

未来にも会える。


「でも、今週いっぱいは家にいろよ。まだ本調子じゃないんだからな」

「はい」


食事はすべて部屋に運んでもらった。

テレビを見たり、本を読んだり、時々眠ったり。

ゆっくりと過ごす時間は、幸せだった。


でも、

なぜこんなに優しいんだろう。

もしかして、咲良さんと何かあった?

罪の意識からこんなに優しくしてくれるの?


ソファーに横になり本を読む哲翔さんを見ながら、不安な気持ちが大きくなる。


「どうした?」

「なんでもない」

気になることはいっぱいあるのに、言葉にする勇気がない。


「明日、俺は出かけるけれど、虹子はおとなしくしているんだぞ」

「うん」

どこに行くのと聞きたくて、聞けなかった。
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