虹色シンデレラ
なぜだろう、側にいるのは私なのに哲翔さんを遠くに感じる。

いくら気づかないふりをしても、咲良さんの気配を感じてしまう。


「どうした?」

黙り込んでしまった私をのぞき込む哲翔さん。


「なんでもない」

会ったこともない咲良さんにヤキモチ焼いているなんて、言えるわけがない。



「後で、散歩に行こうか」

「散歩?」

「ああ。別荘の裏に遊歩道があって、少し上ると小高い丘があるんだ」

「へー」

ここは緑に包まれていて空気もいいし、こうしているだけで気持ちいんだから外を歩いたら楽しいだろうなあ。


「行きたい行きたい」

子供みたいにはしゃいでしまい、哲翔さんに笑われた。
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