虹色シンデレラ
「哲翔さんは、誰と比べて私を運動不足だと言うの?」

「虹子?」

「車の中の鏡もCDも、みんな咲良さんのでしょ。ハーブティーだって、咲良さんが好きだったんでしょ」

きっとここにも一緒に来たんだ。

咲良さんは私なんかよりスイスイ登ったんでしょうね。



「かわいいな」

「はい?」

会話がつながっていない。


「嫉妬されてる気分だ」


悔しい。

馬鹿にされてる。



「ほら、せっかく来たんだから楽しもう」

手を引かれ、立ち上がった。

確かに、ここで喧嘩してもつらくなるだけ。


私の手をしっかり握り、ゆっくりと歩き出した哲翔さん。



「咲良のことはきちんとするから。もう少し時間をくれ」

今度は真面目な顔になって、頭を下げる。


私は、何も言えなくなってしまった。
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