虹色シンデレラ
30分ほど頑張って登ると、開けた広場に出た。


「うわー、すごい」


眼下には緑が広がり、その先には町も見える。

小さな建物や米粒のような車が、おもちゃみたい。

ここまで頑張って登って来たかいがあった。



「ほら、あそこ」

哲翔さんが指さす先には海が見える。


「あそこは砂浜がきれいでね、地元の人しか知らないから穴場なんだ」と、教えてくれた。


あそこって・・・


「どうした?」

「あそこの砂浜、行ったわ」

「いつ?」

「先々週」

「へえー」


誰と来たのかとは聞かれなかった。

でも、きっと気付いている。


「・・・おあいこだな」

「そうね」


恋愛感情も何もなしに始まった私たちの関係。

簡単にいくはずがないのはわかっていたこと。

でも・・・辛い。


しばらく風に当たり、海を眺め、私たちは別荘に戻ることにした。
< 325 / 579 >

この作品をシェア

pagetop