虹色シンデレラ
「ちょっと座って」

席をすすめられ、私は腰を下ろした。



いつの間にか紅茶とクッキーが目の前に並んでいる。

何もしなくても誰かがしてくれる生活。

だいぶなれてはきたけれど、やはり違和感はある。


「うちみたいな家は子育てにとって最悪の環境なのよ」

「え?」

「だってほら、使用人たちはみんなチヤホヤと甘やかすし。子供も調子に乗ってわがままになる」

確かに。

大人たちはみんな自分の言うことを聞いてくれるし、どんなわがままも通ってしまう。

まともに育てって言う方が無理。


「世間の目は宮家の行動に厳しいわ。いつも誰かに見られている環境で育つしかない」

「かわいそう」

「そうね」

そう言ったお母様の唇が震えている。
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