虹色シンデレラ
「世間の基準がどうかはわからないけれど、私も主人も哲翔を厳しく育てたつもりよ。たとえ使用人にでも礼儀はなくしてはだめと教えてきた。周りの人を苦しめるようなことはするなって言い続けたわ。その上で、やりたいことは何でもさせた。欲しがる物も必要と判断すれば与えてきた」

スーッと、お母様の目から涙がこぼれた。


「ごめんなさいね。あなたを苦しめてしまって」

「お母様」


私だって、今の生活が辛くない訳じゃない。

不満も、不安もたくさんある。

でも、お父様もお母様も哲翔さんもみんなが苦しいって知ってしまったから、何も言えない。


「哲翔も悩んでいるんだと思うから、もう少し時間をやってちょうだい。気持ちの整理がつけば元の哲翔に戻るはずだから。そんなに弱い子じゃないから」

やっぱりお母様。

いくら厳しいことを言っても、哲翔さんの事がよくわかっている。


「わかりました」

ちょっと甘めのミルクティーを口にしながら、黙って待ってみようと決めた。
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