虹色シンデレラ
しばらく迷っていた哲翔さんが私の横に寝転んだ。

「気持ちいいでしょ?」

「ああ」



「なあ虹子」

急に神妙な顔になった哲翔さんが、私を見る。

「何?」

「もし俺が高宮哲翔でなくなっても、婚約者でいてくれるか?」

えっ。

「俺が高宮の跡取りでなくなっても、虹子は側にいてくれるか?」


「当たり前じゃない」と言いかけて、言葉を飲み込んだ。


哲翔さんも人間だから、気弱になるときもある。

本当なら、「辛いなら一緒に逃げだそう」って言ってあげたい。

でも、まだ大丈夫。

哲翔さんはそんなに弱くはないから。


「弱気になってどうするのよ。私のことも、咲良さんのこともすべて中途半端なまま逃げだそうって言うの?哲翔さんらしくない」

精一杯叱咤した。
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