虹色シンデレラ
「さすが哲翔様。いいセンスですね。私も虹子様にはこの色がお似合いと思っておりました。春ですので明るい色がいいですし、かといってピンクやオレンジよりもリラ色がお似合いと思います」

デザイナーさんも満面笑顔。

リラ色って・・・ライラックのこと。

淡い紫色は私も好きな色。


「どういう風の吹き回しなの。あなたが顔を出すなんて」

何があったのかと、お母様が聞いている。

「どうもしませんよ。虹子が心配で見にきたんです」

にこやかに答える哲翔。

ポカンと口を開けているお母様。

ヤダ、哲翔ったら。

私は耳まで真っ赤になってしまった。


「あのー、リラ色でお願いします」

会話を断ち切るように、私が声を上げた。

恥ずかしくて、聞いていられない。

これ以上黙っていると、哲翔が何を言い出すかわからない。
< 374 / 579 >

この作品をシェア

pagetop