虹色シンデレラ
「哲翔、待って。お願い、痛いから」

ガッチリと掴まれた手首をかばいながら、必死に訴えたけれどダメだった。


哲翔は振り向くことすらせず、

私は廊下を引きずられるように離れに向かう。


後ろから心配そうな乃梨子さんがついてくる。




まっすぐに自分の部屋の前まで来た哲翔。

「乃梨子っ」

急に足を止め、私には視線を向けることもなく乃梨子さんを呼んだ。


「虹子と話がある。だから呼ぶまでは誰も来ないでくれ。電話も、母さんも取り次ぐな。いいな?」

その強い口調に、

「かしこまりました」

そう答えるしかない。
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