虹色シンデレラ
「虹子、ちょっと聞いて」

私の携帯を手に戻ってきた母さん。


すぐにでも手を出したいのに、母さんは手放してくれそうにない。


「あなた、助けられたときのことを覚えている?」

「助けられたとき?」

「そう。たくさんの通行人がいたおかげで、あなたは助かったのよ」

「うん」

知っている。

もっと小さな交差点だったり、駆けよってくれる人がいなかったら、私は車に連れ戻されたと思う。


「でもね、人が多ければ色んなことを言う人もいるの」

母さんの表情が暗い。
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