虹色シンデレラ
「お前は知らないだろうけれど、昨日は大騒ぎだったんだ。お前と連絡が取れなくなって、菅原も乃梨子も慌てふためいていた。わざわざ俺に連絡するなんてよっぽどのことなんだぞ」
「・・・」
「その上夕食にも間に合わなければ、当然父さんや母さんの耳にも入るし、隠しておく訳にもいかなくなる。そのくらい分かるよな」
「ええ」
すべては私の責任。
申し訳ないと思う。

「そして、ことが表ざたになれば誰かが責任をとらないといけない。それを決めるのは人事担当の菅原の仕事だ。お前が口を出すべきじゃない」
「ちょっと待って。どうして?悪いのは私なのに」
「分かってる。でも、そんな単純な話じゃないんだっ」
哲翔さんが怒っている。

「今回は仕方ないけれど、これからは菅原のすることに文句を言うな。不満があれば俺に言え。いいな」
不機嫌そうに、哲翔さんがソファーに座り込んだ。

なるほど。たとえ侍従関係があるにしても、菅原さんには菅原さんの立場があるから、その領分は侵すなって事ね。
納得した訳じゃないけれど、哲翔さんが事を穏便に解決しようと思っていてくれるのは分かった。
である以上、私も素直に従おう。

「わかったわ。でも、それを言うためにこんなに早く帰ってきたの?」
「ああ」
言いたいことは言ったぞって感じで、ソファで横になってしまった哲翔さん。

自分の部屋があるでしょうと言いそうになったけれどやめた。
今の私は分が悪い。
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