この可愛いヤツがオオカミ君だったりするんですが。

彼の様子が気になり車を路肩に停めた。



「 どうしたの?話してみて 」

「 ん~、実はKENTに元カノがいまして… ちょっと顔だしづらいと言うか 」



元カノ…だと?

そりゃいるでしょうよ、あんた可愛いもん。

でもね、先輩として上司としては下がらないわよ。



「 それは君のプライベートよね、私たちは仕事で挨拶に行くの、元カノがいようといまいと鈴木君は大光商事の鈴木として行くんだからね 」

「 そうですよね… すみません!情けないですね、僕気を引き締めます 」

「 良し!大丈夫よ、私がいるんだから 」



うー、素直、可愛いわぁ

私キツい言い方はしてないよね?

仕事だもん、教えてく立場になったんだしこれくらいはね。



「 じゃ行きますか 」

「 待って先輩!すみません、もう少しだけこのまま… 」




あら、息整えてる?

そんなに身構えるほどの元カノがいるわけ?

KENTは美女揃いの店だけど若い子入ったのかな……

いいわ、見てみようじゃないの!元カノを!



と、内心意気込んだもののKENTはやはり美女揃いの店。

その中にいた小柄でいて可愛いスタッフが一人、すぐにわかった。




「 鈴木さん久しぶりですねー!あら、もしかして新人さん?」

「 田辺さんお久しぶりです、うちの新人紹介しますね、鈴木です 」

「 やだ、ダブル鈴木じゃなーい 」



そこ余計だから、わかってて言わないでよね。

美人は何言ってもね、許されるなんて人によるんだから。




「 あははは、そうなんですよ~ 二人共ね、鈴木~ 」

「 うちも新人いるんですよ、麻里也 」



麻里也、そう呼ばれた彼女は彼の元カノだった。

それは彼と彼女の対面する目でわかった。


20代と30代… 若さは1年でも大きいと自負してるだけに今はただ悔しい。




「 あら、会社から電話だ… 鈴木君、挨拶して戻ってね 」



私ともあろう者が、やってしまった。

ついさっきは彼に私情を挟むなと言ったばかりなのに、私が私情で店を出てしまった。


しかも、嘘をついて。


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