この可愛いヤツがオオカミ君だったりするんですが。

ムカつく、憎めない、嫌いになれない奴。

新人から見れば疑問に思うところ、オーナーがやけに馴れ馴れしくしていれば何かしらあるかと思うもの。



「 お二人は友達なんですか?」



単に素直に口にした彼に、私より先に颯人が話す。



「 愛月は昔の友達、女、寝た関係、昔も今も恋人じゃない、ムカつく奴、嫌いじゃないから好きとも言えるし、互いに切れない仲、ってとこだな 」

「 えっと… わかりにくいけど元カノ元カレではないけど関係があったりして… 」

「 鈴木君、いいから。一切聞き流して忘れてくれていいの 」

「 はい… 」



ニヤリニヤリとするいちいち勘に触る颯人。

相変わらずイケメンだ。

それは変わらない魅力を発する嫌な奴。

冷静も平静も無理。

地を隠すのが難しい相手だ。

あの当時、まだ互いに学生で10代の頃。

思い出す……

夏休みの祭り時、友達3人と遊びに出かけ、偶然会った同い年の男子3人と意気投合し一緒に行動を始めた。


当然のように3人はタイプが分かれカップル状態となる。

私の隣には颯人。

カッコ良くて… すごくドキドキして……

慣れてるようでぎこちなく手を繋いで歩いていた私たち。

颯人は裕福な家の息子で離れに部屋があり、友達らと解散した後、私は誘われるまま颯人の部屋へ。

私にとって、大きな出来事だった。

颯人とのキス、初体験。

全てが素晴らしくて輝いてるような体験。

甘い二人だけの時は始まりだと思っていたが、それは私だけだった。



“付き合うつもりはないよ、でもあんたが気に入ってる”



颯人の言葉は好きでも嫌いでもなく、私の気持ちが宙に浮いたまま流れに身を任せていた。

若さゆえ… それで終われば良かった。

この10年の間に、数回だけ関係があったのは認める。

ただ、どちらかに問題が起きると互いに壁を壊し無心で抱き合い慰める。

そんな訳のわからない関係があるからか、恋愛から遠ざかった。



「 愛月、梅昆布茶 」



私の好きな梅昆布茶、暑い時期には冷たくして出してくれる奴。

だから憎めなくて、この関係が恨めしい。



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