雨のち晴れ


「ん?」

突然一粒の雫が私の頬をかすった。

「雨だ.....,」

ポツポツと雨の量が増えて行く。

さっきまで晴れていたはずなのにすでに空は厚い雲に覆われていた。

せっかくのデートが台無しだよ.....

私がそんなことを思いながら空を見上げていると突然背後から

「危ないっ!」

という晴馬の声がした。

晴馬?

こんな晴馬の怖い声聞いたことがなかった。

何かあったのだろうか?

そう私が振り返ろうとした時だった。

私を背中から突き飛ばした。

「キャッ!」

そのまま地面に倒れこむ。


ーキキィ.....!ドン!


その瞬間、すごい音が街中に響き渡った。

慌てて振り返るとそこには信じられない光景が広がっていた。

人混みの中に突っ込んでいる車と、歩道に横たわる人々。

な、何が起こったの......

その光景があまりに残酷で現実と受け入れることができなかった。

「大丈夫か!」

「しっかりしろ!」

「助けて!」

「痛い......痛いよぉ......」

「大丈夫だからね」

そんな声がいろんなところから聞こえてくる。

携帯電話を手にして叫んでいる人、目を背けている人、泣いている人。

あれ?

「晴馬......」

私は大切な人の名前をつぶやいた。

そうだ......晴馬......

晴馬がいない。

さっきまで隣にいたのに。

『危ないっ!』という声。

あれは間違いなく晴馬の声だった。

なんだか嫌な予感がする。

私はすぐに立ち上がり、彼の姿を探した。
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