命の花が散る頃に。
3、死神が大好きだから許さないんです
僕は高価な和服に身を包み、お城の中を歩く。逃走から見つかってしまった僕は、強制的にここに連れてこられた。
僕は――霊界とは違う世界、神様が住まう『神界』の貴族の1人だ。肩苦しい毎日を送って来ていた場所。
「……アルト様。こちらです」
「ありがとうございます」
僕はペコりと頭を下げ、静かに襖を開いた。部屋に入り、襖を閉めると足音を極力立てないように近づいて正座をした。こうしないと叱られるから。
「お母様、お父様…アルトです」
そう言うと、父はえらそうに「久しぶりだな。アルト」と笑った。僕は無言で父を見る。母は倒れているハヤトとチサキを見つめながら笑っていた。2人は苦しそうに僕を見つめている。
「…ハヤト、チサキっ!!」
僕が近寄ろうとすると、僕の体が吹き飛ぶ。思い切り床に叩きつけられた。父は僕に近寄ってくると、胸ぐらを掴んで僕を強制的に立ち上がらせた。
「このクズ息子がっ!死神になぞなりおって!!お前は俺の後継ぎだ!」
「……はぁっ。実の息子にも容赦ないのか…」
苦しそうにハヤトが呟いた。僕は何も言い返さずにただうつむく。
「……なぜ逃げた?何十年も姿を眩ませた!?」