命の花が散る頃に。
僕は霊道の中で倒れたアルトを支える。アルトが神界にいる貴族の1人だったことを強制的に神界に連れてこられた際に知った。
「…ふぅ」
僕らの目の前に白髪頭の女性が現れた。その女性は「初めまして。話は後でします。とりあえず、アルトを運びましょう」と言って霊界に向かって進み始めた。僕たちも後に続いた。
霊道を抜けると、霊界にある普通の霊が暮らす江戸時代の町並みをした町に出た。小さな子どもから大人まで全員動きやすそうな着物に身を包んでいる。
「……ここが私の暮らしている家です」
そう言って女性は家に入る。僕たちも家に入り、アルトを和室に寝かせた。
「…私はライ。私もアルトと同じ貴族の1人でした。神界には1つの掟があります。それは、神様は後継以外の神様になってしまうと永遠に神界を追放されるということ。それを私とアルトは知りながらも死神になったんです」
ライさんの言葉に僕とハヤトは驚いた。ライさんは話を続ける。
「神界での暮らしは死神が考えているよりも楽なんです。なので、皆は後を継ぐ。しかし、私やアルトのような神様もごく稀にいる。それに、アルトは緊張の糸が解けたのでしょう。眠らせてあげてください」