命の花が散る頃に。
その日の放課後。僕は千咲に話しかけた。
「そう言えば、千咲ってさ。ファンタジーが好きって言ってたじゃん?」
千咲はうなずく。僕は話を続けた。
「死神っていると思う?いたとして……どんな存在だと思う?」
僕が問いかけると、千咲は何かを考え込んだ。一度、普通の人間に聞いてみたかったこと。僕ら死神をどんな感じに思っているのか知りたいんだ。
「死神はいると思う。どんな存在って……皆、魂を刈り取るとか言ってるけど……僕は、魂とかに優しいイメージがある」
「なるほど。じゃあ、霊とかの類って信じてる?」
「うん。僕、そういうのは見えないけど居ると思うよ……でも、どうしてそんなことを?」
「……ファンタジーの中で死神が一番好きだから」
そう嘘をついて笑った。今、僕は死神ではなくて普通の人間(に見える状態になったいる)。
死神が普通の人間に姿を見せる方法は、僕が着ているローブを脱ぐだけ。だけど、霊界でローブを脱いだって何も変わらないんだ。
現世には、死神の姿を見せるという不思議な力が働いているらしくて、その力を遮断するために生まれたのがこのローブなのだそう。
「そっか……僕も死神、好きだよ」
千咲はそう僕に微笑んだ。