命の花が散る頃に。



中学2年生の冬休みがやって来た。今日は大晦日。今日も今日とてローブを羽織った僕は、屋根を伝って跳んでいた。

15時30分。××病院にて病死。

という仕事を受けて、僕は病院へ向かう。フードを被り、病室に入ると見慣れた少年が、悲しそうにおばあさんを見つめていた。千咲だ。僕は千咲のおばあさんであろう人物に話しかける。

「初めまして。死神です。お迎えに参りました」

僕が微笑むと、おばあさんは「そうか……」と微笑み返してくれた。

「……娘さんとお孫さんには、お別れの言葉をかけた方がよろしいかと」

僕は病室を見渡しながら言った。千咲と千咲の母は、何も無いところに急に話しかけたおばあさんを見つめながら、驚いた顔を見せる。

「……ありがとう……大好き」

おばあさんはそう言うと、命を落とした。僕はおばあさんの魂が上に登っているのを最後まで見届けると、千咲の隣を通る。

「……千咲の寿命は後1年……か」

と呟くと、病室を飛び出した。空高く跳びながら、通信機を操作する。

「――15時33分。××商店路地裏にて暴行により死亡。15時40分。××前の交差点にて事故により6人死亡」

資料を読み上げながら、屋根に着地して、辺りを見回した。次の仕事は、この辺り。通信機の時計は、既に35分を指している。

「……あれか」

僕は屋根から飛び降り、地面に綺麗に着地する。そこには、倒れている20代の男性がいた。まだ肉体から魂は離れてはいない。

僕は刀を取り出し、男性の胸に突き立てた。そして、刀を消して次の仕事場所に向かった。
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