夢見社
「他に何か思い出したことはあるかい?」
なるべく何でもない風に桂木は尋ねた。青年は表情を固くする。
「他に?」
「ああ、たとえば君の年齢とかさ」
青年はゆっくりと首を横に振る。
「住んでいるところとか。景色を思い出したりしないかい?」
「いいや」
「じゃあ、名前の一文字なんてどうだい? 友達や家族になんて呼ばれてた?」
「わからない」
「そうか。じゃあ……」
桂木が再び質問を投げかけようとしたところで、青年はキッと顔を上げた。
「わからないって言ってるだろう!」
電気が大量に流れて途切れるような音が響いた。青年の叫びとほとんど同時に視界は消え、桂木の意識は現実に戻った。
「支局長! 大丈夫ですか?」
夢から覚めて最初に感じたのは頭の痛みだった。脳の全体がずきずきと痛む。なんとか体に力を入れて起き上がると、不思議なことに部屋の中は真っ暗だった。
「何があったんだ?」
痛む頭を押さえながら桂木が尋ねる。ベッドの隣に立っていた職員の一人が驚いたような声を上げた。
「それはこちらの台詞ですよ。電波の波長が突然荒れだしたと思ったら停電したんです。まるで配線がショートしたような感じでしたよ」
すぐに予備電源が作動して屋内に明かりが灯った。桂木は他の職員と共にモニターの前に立つ。
「今の夢のデータは?」
モニターを操作していたひとりがあれこれとボタンを押して画面を表示させた。
「これです。波長が不規則な動きをしています」
「電波の逆探知は可能か?」
「やってみます」
そう言うが早いか、彼の手が動き始める。しばらく、ピ、ピ、とモニターが反応する音だけが聞こえていた。
タン、と一際大きな音と共にボタンが押された。
「見つけました」
確信に満ちた声でモニターを操作していた彼が言う。
「どこだ?」
桂木が問うと、その職員はモニターに付近の地図を表示させた。
「割り出された電波発信地の緯度と経度を当てはめます。……ここです」
「ここは……」
桂木は懐疑的な声を出した。
なるべく何でもない風に桂木は尋ねた。青年は表情を固くする。
「他に?」
「ああ、たとえば君の年齢とかさ」
青年はゆっくりと首を横に振る。
「住んでいるところとか。景色を思い出したりしないかい?」
「いいや」
「じゃあ、名前の一文字なんてどうだい? 友達や家族になんて呼ばれてた?」
「わからない」
「そうか。じゃあ……」
桂木が再び質問を投げかけようとしたところで、青年はキッと顔を上げた。
「わからないって言ってるだろう!」
電気が大量に流れて途切れるような音が響いた。青年の叫びとほとんど同時に視界は消え、桂木の意識は現実に戻った。
「支局長! 大丈夫ですか?」
夢から覚めて最初に感じたのは頭の痛みだった。脳の全体がずきずきと痛む。なんとか体に力を入れて起き上がると、不思議なことに部屋の中は真っ暗だった。
「何があったんだ?」
痛む頭を押さえながら桂木が尋ねる。ベッドの隣に立っていた職員の一人が驚いたような声を上げた。
「それはこちらの台詞ですよ。電波の波長が突然荒れだしたと思ったら停電したんです。まるで配線がショートしたような感じでしたよ」
すぐに予備電源が作動して屋内に明かりが灯った。桂木は他の職員と共にモニターの前に立つ。
「今の夢のデータは?」
モニターを操作していたひとりがあれこれとボタンを押して画面を表示させた。
「これです。波長が不規則な動きをしています」
「電波の逆探知は可能か?」
「やってみます」
そう言うが早いか、彼の手が動き始める。しばらく、ピ、ピ、とモニターが反応する音だけが聞こえていた。
タン、と一際大きな音と共にボタンが押された。
「見つけました」
確信に満ちた声でモニターを操作していた彼が言う。
「どこだ?」
桂木が問うと、その職員はモニターに付近の地図を表示させた。
「割り出された電波発信地の緯度と経度を当てはめます。……ここです」
「ここは……」
桂木は懐疑的な声を出した。