貧乏姫でもいいですか?(+おまけ)
「はぁ、はぁ」と、肩で息をしながら、花菜は思わずその場にへたりこんだ。

さすがに体力のある月君は、息を荒くしながらも余裕の表情である。仁王立ちになって花菜を見下ろした。

「おいお前、どうして逃げる。何か企んでいるんだろ」

「し、失礼なこと、言わない、で、ください。私、は、なにも」

「どうして逃げるんだ。なにもなきゃ逃げないだろう」

「月君が追いかける、から、ですよ」

「じゃあ、手にしているのは、なんだ。菓子じゃないのか。私に内緒で女御と食べようっていう魂胆なんだろう」

「は?」
――なに言ってるんだろう、この男。

唖然として眉をひそめているところに、女房が心配そうに現れた。

「あ、あの、おふたりとも大丈夫でございますか?」

渡りに船とはこのことだ。

気を取り直して立ち上がった花菜は、にっこりと女房に笑みを向ける。

「衣が出来上がりましたので、お持ちしました」
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