貧乏姫でもいいですか?(+おまけ)
「助けてくれた方がいたのです」
人鬼丸かもしれないとは、何故だか言えなかった。
「馬に乗った総髪の……黒装束の多分若い男性だったのですけれど、お名前を聞くことを忘れてしまって。蒼絃さまは、そのようなお知り合いの方はいませんか?」
蒼絃は、「総髪の、黒装束の男」と呟くと、フッと口元に笑みを浮かべた。
「羅城門の近くで見かけたことはある。上弦の月が美しい夜だった」
続きを期待してみたが、そう言っただけで蒼絃は「では」と席を立った。
「あ、またいらしてくださいね」
――見かけただけなのだろうか?
藤原蒼絃の後ろ姿を見送りながら、花菜は想像してみた。
上弦の月の下、黒装束の男と白い狩衣を着た藤原蒼絃が空を見上げる……。
月も、彼らも、羅城門も。
その全てが絵のように美しかっただろう――。
人鬼丸かもしれないとは、何故だか言えなかった。
「馬に乗った総髪の……黒装束の多分若い男性だったのですけれど、お名前を聞くことを忘れてしまって。蒼絃さまは、そのようなお知り合いの方はいませんか?」
蒼絃は、「総髪の、黒装束の男」と呟くと、フッと口元に笑みを浮かべた。
「羅城門の近くで見かけたことはある。上弦の月が美しい夜だった」
続きを期待してみたが、そう言っただけで蒼絃は「では」と席を立った。
「あ、またいらしてくださいね」
――見かけただけなのだろうか?
藤原蒼絃の後ろ姿を見送りながら、花菜は想像してみた。
上弦の月の下、黒装束の男と白い狩衣を着た藤原蒼絃が空を見上げる……。
月も、彼らも、羅城門も。
その全てが絵のように美しかっただろう――。