桜の城のノクターン
∬バイト∬
「さて、何からやりたいですか?適当に決めてください」
そっけない態度で後ろを歩くフェニルに書類を渡す。
リズのあまりにも違う態度に少し心配になって思わず聞く。
「あのう、すいません。ご迷惑をおかけしてしまって…私と一緒なんてただの足手まといですよね…」
そう言われて、自分の態度があまりにも悪かったことをリズは恥じた。
「…すいません、私こそご無礼を。申し訳ありませんでした」
フェニルに向き直り深ぶかと頭を下げる。
「そ、そんなかにかしこまらないで下さい!迷惑をかけているのは私なんですから!そんなことより、お仕事の時の口調ではなく、さっきみたいに普段通りのしゃべり方にしてください。なんだか慣れなくて…」
ちょっと照れ臭そうにお願いする。
「わかりました。善処します。時々先程のような口調になってしまいますことをお許しください」
満面の笑みでリズは話す。
「またそのしゃべり方!」
「早速注意されましたね…気を付けますが、少々時間を下さいませんか?」
こちらも苦笑まじりでお願いしてみる。
「よろしい」
急に偉ぶった態度をとったフェニルに、両者ともにおかしくなって吹き出してしまった。
「ではとりあえず締め切りが近いこの猫探しから始めましょうか」
フェニルは頷き、二人は迷いそうな小路を一路大通りへと向かうのだった。