桜の城のノクターン
大きすぎず小さすぎずない屋敷には人気はなく、この屋敷に招待してきた婦人しか住んでいないようだった。
誰もいないが手入れされている屋敷内。
「このお屋敷にお一人でお住まいなのですか?」
今まで無口だったリズが口を開く。
別段気を悪くもしなかったようでのほほんと主は答えた。
「少し前までは同居人が居たのだけれど、出ていってしまってねぇ。今はこの広いお屋敷に一人ぼっちよ。ちょうどお茶飲み友達が欲しかったところだったの。今日焼いたお菓子もあるから少し待っていてね」
ててて、とどこかに駆けていってしまった。
残された二人と一匹。
そのうちの一匹が二人を見上げると、ふいっと目を背けあるドアの方へ歩いていき、そのドアの前でちょこんと座り見上げて見せた。
どうやら、そのドアを開けて欲しいようだ。