桜の城のノクターン
二人時々ショッピング
二人は、大通りに戻る道を歩く。
リズはポケットに手を入れあたりを見回しながら。
フェニルは下を向き、道に転がっている石を見ながら歩いていた。
なぜ、フェニルがそんなにも沈んでいるのか、リズにはわからなかった。
「どうした?」
リズのその言葉さえ耳に入っていない様子。
リズはフェニルに向き直った。
リズが止まったことにすら気付かずに、そのままリズにぶつかる。
「・・・ご、ごめんなさい・・・」
見上げるその目は涙で濡れていた。
「なぜ、泣いている?」
想定外の事態に仕事口調になってしまうが、今は誰も気にするものはいない。
ぶつかったリズの胸を押しのけ、逃れようとするが、不意に抱きしめられる。
雫が溢れだす。
フェニルにも、この涙の理由はわからなかった。