桜の城のノクターン
マダムが、そっとリズに歩み寄る。
「本日はどのような御用件で?」
気配がしなかったので、リズは驚いていた。
しかし、どんな女性をも魅了してしまう笑みを浮かべ、
「この娘に似合う服を見立ててくれないか?私にはわからなくて」
そういった。
マダムには刺激が強すぎたようで、バタンとその場に倒れてしまう。
リズは慌てて抱き起こす。
その行動がいけなかった。
キャー、と店中の女性が騒ぎ出したのだ。
何のことか、全く見当のつかない二人だけが目をパチクリ。
私も!私も!と次々と女性たちが迫ってきたことで、ようやく状況を理解したリズは、フェニルの手を引き、(マダムを放り投げ)足早に店を後にした。
しかし、女性のパワーは凄まじく、店を出た後も追いかけてこようとしていた。
「少し走りますよ」
そういうと、フェニルの手を引きながら、走り出した。
少し足をもつれさせながら、フェニルは転ばないようについていくだけで必死だった。