桜の城のノクターン
ようやく細い路地に入りこむと、歩調を緩めた。
どうやら集団を撒いたようだった。
息も絶え絶え、フェニルが口を開く。
「一体、何がどうなってるんですか!?」
それはそうだ。
フェニルにしてみれば、何が起こったかなんて理解しがたいだろう。
リズは少し面倒になったので、説明を省いた。
「きっと僕たちの前に有名人でも走っていたんですよ」
そんな理由で納得するものかと思ったが、フェニルは案外簡単に納得した。
「なんだぁ、てっきり私たちが追われてると思ったのに。よかった。」
そういうフェニルは、心の底から安堵しているようだった。
しかし、これからどうしようか?
今ここから大通りに出ればまたあの集団に出会ってしまうだろう。
それだけは避けたい。
「どこか行きたい場所ないですか?」
そう聞くリズに、フェニルはフフッと笑う。
「また戻ってますよ、って私も急にしゃべり方なんて変えられないけどね」
フフフ、ハハハと二人は笑いだす。
はたから見れば、頭がおかしいのではないかと思われる行動に、二人はしばらく時間を費やした。