桜の城のノクターン
「あ、シザンサスですね。母が好きだった花なんです。綺麗ですよね」
「母上はなぜこの花を?」
「さぁ…?昔聞いたような気もするのですが…私も小さかったのであまり覚えていないんです」
自らの顎に手を当て、神妙な面持ちで考えるが、答えは出そうにない。
「あとどれくらいかかると?」
少々の沈黙が耐えられなくなり、リズは問う。
「あ、20分くらいって言ってました。それまで何して待ってますか?」
逆に問われて、リズは視線を巡らせた。
その先に見えたのは宝石店。
「では、隣の店でも物色して待っていよう」
そう提案すると、フェニルは笑顔で、はい、と頷いた。