桜の城のノクターン
「そうやって何もかも諦めるのですか?諦めきれるのですか?」
少年も静かに問う。
「…あきらめるしか、ないんです…」
少女の頬を一筋の涙が伝う。
それは、当の昔に忘れ去った記憶。
いや、封じていた過去。
何度も手を伸ばし、掴もうとしてきたが、いつも寸前で目の前から奪い去られていったもの。
そう、希望。
全てを持っていた少女が全てを失った瞬間。
あの日から、全て変わってしまった。
そう、父が病でかえらぬ人になってしまってから―――。