桜の城のノクターン
「では、ティータイムが終わってから、さっそく出かけましょう」
とは言っても、フェニルはもう食べ終わっており、リズも一欠片を残すのみだった。
最後の一欠片を口に運び、冷めたダージリンで胃に運ぶ。
過ぎてゆく甘い時にしばし身を預けた後、リズは立ち上がる。
「では行きましょうか」
「はい」
フェニルも立ち上がり、テーブルを後にする。
「ごちそうさまでした」
「ごちそうさまです。とってもおいしかったわ」
二人のツーショットを見てキルシュが目を見張る。
「おや、リズはフェニル嬢と知り合いだったのかい。隅に置けないねぇ」
からかうキルシュにリズは大人の態度でかわす。
「これから一緒に紹介屋へ行ってきます。ごちそうさまでした」
キルシュは無視されて、少しだけ拗ねてしまったようで明後日の方を向いてしまった。
苦笑して店を後にする。