君は僕のもの 【続】
大体、こんな短いスカート何か穿いて電車の中にこの俺が乗せたいわけがない。
ふざけた話だよね。
「人がいなきゃいいんだ?」
上から見下ろす愛梨の顔は車内の暖房のせいか、少し熱っぽくて“ソノ気”になりそうで困る。
…ここが家だったら、
ちょっと歯痒い気持ちを隠してそのままゆっくり愛梨から離れて距離を取る。
─だけど。
「……何?」
離れてやったのにも関わらず、今度はギュッと俺の腕に絡みつく様にくっついてジーッと俺の目を見てくる。
「キ、…キスは駄目だけど……離れるのは、…もっと駄目」
少し潤んだその大きな瞳とグロスを塗ったその唇と、
やっぱり今日はいつもよりも甘えた愛梨だ。
別に嫌じゃないし…むしろ嬉しいけど、何か変な感じはする。
素直じゃない愛梨を弄るのが楽しいからね。
でもたまにはこんな愛梨もいいかな…?ってちょっと思ってみたりする。
「はいはい」
無意識にも薄らと笑みを浮かべる自分が電車の窓ガラスに映る。
俺がこんな風に笑うのは多分どこを探しても愛梨の前だけだろうな…少なくとも俺は、愛梨の前だけではこんな俺でいたい。
そのままの俺で。
だからちょっとくらいのことには付き合うしかない。
俺以外の男に頼られても困るし。
まぁその“乙女心”ってやつは…いまいち、だけどね。