君は僕のもの 【続】
「本当は怖…「怖くない」」
あたしの言葉を遮る様にして樹は言う。
その眉は少しばかり釣り上がっていて不機嫌なのが目に見える。
…けど、
今まで10年以上樹と一緒に居たけど、何だかんだで遊園地に一緒に来たことなんて無かったから…
まさか!!
まさか…樹がジェットコースターが苦手だなんて、知らなかったよ…
だけど何か笑えて来ちゃうかもしれない。
樹には悪い気もするけど。
「樹の嘘つき、何で言わないの?」
少しの笑みを含みつつも、まだ不機嫌なままの樹の手を握る、自分の手の力を少しだけ強めてみた。
浮かない表情のままの樹。
「怖いわけじゃない、苦手なだけ」
ここまで来てもまだ強気な?…というか、樹らしいというか。
「あたし知らなかったよ?」
「だって言って無いもん」
「…何それ」
ちょっと頬を膨らませつつもそう言うと、樹も少しだけ小さく笑った。
「行こっ!!」
並んでいた列からはみ出して樹の大きな手に指を絡めて、そのまま駆け出す…
「…っ?」
驚いた樹の表情を見て何だか嬉しくなって、
だけど今日のあたしは少しでも樹のことをリードできてるんじゃないかな?
なんて淡い思いが胸の中に浮かんで、ちょっとばかりさっきよりももっと嬉しくなっちゃったりした訳で。